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心のふるさと 人々のふるさと
2010年「第13回各国大使館員日本語スピーチコンテスト」受賞作品

広報部 姜琦

 

 日本に来てまもなく、自動車の運転免許を取るために、伊豆大島という相模湾にある火山の名残のある小さな島で2週間ほど滞在しました。都会の喧騒(けんそう)を離れて、山と海の自然で、ゆっくりしていると、印象的な場面に多く遭遇しました。

 朝、白い霧が峰の間にただよっている様子は、まるで中国の水墨画のようです。晴れた日、紺碧の海が天に尽きるあたりに、川端康成の小説「伊豆の踊り子」に登場する天城山がほのぼのと現れてきます。また、仮免許をもらって、町の道路で練習しているわたしがよく目にした、小型車で買い物にでかける地元の主婦たちの素直で、きれいな笑顔。運転のルールやマナーにまだ習熟していないわたしにやさしく接してくれたあの人たちに、すぐ親しみを感じるようになりました。

 いろいろな出会いのたびに、子供時代のふるさとのことを思い出しました。中国内陸部の平原地域にあるふるさとには、山と海こそありません。しかし、畑が広がる様子、青空と緑、そして人々の笑顔は大島と同じでした。

 夏休みの午後、家の中庭で面白い絵本に夢中になっていた自分の頭の上にエン樹、ざくろ、柳の木が日差しを浴びながら、元気に茂っています。

 春、留守番をしている時、畑のにらの苗を冷たい雨から守ろうと藁たばを苗一面に覆いかぶせました。一人前に畑の世話をしたことに大きな誇りを感じていた私は、帰宅して「気持ちはありがたいが、せっかくの雨なのに」と話す祖父の悔しそうな顔にショックを受けたものです。

 夜になると、周りよりいち早く贅沢なテレビを買ったわが家に近所の人たちが詰め掛けて、日本のテレビドラマ「赤い疑惑」を楽しみました。主人公の感動的な運命はもちろん、画面に映る冷蔵庫や炊飯器、女性のおしゃれな格好など日本の庶民の生活ぶりも、みんなの心を揺さぶるものがあったのです。

 あれからもう20年。都市化の流れは私のふるさとにも及び、たまに帰る度に、その変化に驚かされます。道路の整備が進み、マンションと公園がどんどん建てられて便利になる一方、中庭や畑は姿を消してしまいました。町を歩き回ると、かわいがってくれたおじさん、おばさんたちより、別のところから移住してきた人を多く見かけるようになりました。馴染んだ土に立ち、鉄鋼とコンクリートのニュータウンを見つめる私は、懐かしい気持ちと、言い表せない複雑な思いが入り混じるのです。

 現代にいきる私たちは、だれでも田園風景のふるさとを望んでいるように思います。疲れた心を慰めてくれる、いわば「心のふるさと」と言ってもいいでしょう。しかし、これは必ずしも21世紀の現実を生きる人々の考えを反映しているわけではないと思います。豊かさへの願いをかなえて運命を自らの手で握ろうと、夢をちゃんと持って、がんばっているふるさとの若い世代の姿を見て、彼らにも充実した満足できる人生を送る権利があるし、彼らにとってはいまこそが真の黄金時代ではないか、と思うようになりました。

 車やスーパーといった便利な生活を楽しめると同時に、きれいな空気、落ち着いた環境、人間の心と心のふれあいにも恵まれる大島。私のふるさとにも、きっといつかそのような調和が訪れると堅く信じております。

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